音調 entoação
 相対的な声の高さ(ピッチ)が発話において上下に変化する様子を言う。ポルトガル語においては疑問文をあらわすための文法的手段として文頭に«será que» を置くこともできるが、基本的には肯定文と疑問文との区別が音調に依存しておりその役割は重要である。
 ポルトガル語の音調は相対的な高さを高・中・低の三段階にわけておくことで記述が可能である。
 音調はPEとPBとで基本的にその型が異なることが知られている。たとえば肯定文では一般的に降調といわれるが細部においてはPBのほうが上下動が豊かであると言える。経験的に理解されているこうした特徴は近年のコンピューターを用いた音調分析によって容易に描き出すことができる。特徴的な例を音節の核になる母音を中心に表示すると肯定文は図1のようになる。

 また疑問文は同様に音調分析の結果を以下の図2のように抽象化して表示することが出来、PEでは降昇調が、PBでは降昇降調が一般的である。

 なお音調は通常ある程度連続的な上昇下降をみせるが、選択疑問文においては選択肢の切れ目(A ou B)において非連続的な段差がみられ、楽音にして時には1オクターブ以上急激に下降するのが特徴である(図3)。

 伝統的には音調の型を聴覚印象にしたがって大雑把に視覚化する他なかったが、技術進歩により音調の分析は音響音声学的手法を用いて可視化・検証することが容易に可能となり、教育・研究の分野で大きな可能性が開けている。

彌永史郎 2005 ポルトガル語のイントネーション Anais XXXV 日本ポルトガルブラジル学会
彌永史郎 2011 ポルトガル語四週間 大学書林 p.50-54.

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