分音記号 trema
 ポルトガル語の正書法を現代的な正書法に改めるため20世紀初頭にポルトガルで発布された正書法規則集(1911)の第XLVI章には < g >, < q >, に後続する文字 < u > が /u/ の音価をもつ場合は < gùe- >, < gùi- >, < qùe- >, < qùi- > とすると規定されている。
 しかしながら、この規則に基づいた最初の正書法協定(1931)をふまえブラジルで勘案された正書法規則(1943),第43章、規則12 において < ù > に代わる正書法上の手段として< ü > さらには < ï > ex. «vaïdade» が提唱された. これらは1945年の正書法協定第27章において廃止がうたわれたが、協定書に署名がなされたにもかかわらず、ブラジルで実行に移されなかったため、< ü > はその後もブラジルにおいてのみ生き残り1990年の正書法協定が発効し旧正書法から新正書法に完全移行する2011年まで70年間にわたりブラジルの正書法でもちいられることになった.
 分音記号の廃止は正書法の簡略化には資するところがあるが、音韻的な価値のある記号であるから、理論的には語の発音が不明になるので記憶の負担が増えることになる.

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