擬音語 onomatopeia
 動物の鳴き声や物音など、自然界の音を模倣したり、それを象徴的に表した語。擬声語とも呼ばれる。また日本語学では、フランス語の onomatopée を翻字した「オノマトペ」がよく使われる。
 同じ自然界の音であっても言語によって認識のされかた、さらにはその転写の方法が音韻体系によってことなる。同じ猫の鳴き声を日本語では「ニャー」ととるがポルトガル語では «miau», フランス語では «miaou», 英語では «mew» と書きとるというような言語による動物の鳴き声の違いはその好例である。
 伝統的には、外部音を模写した「擬音語」と音をたてないものを音によって象徴的に表す「擬態語」という範疇がある。
 ポルトガル語学では、擬音語(onomatopeia)と表出語(palavra expressiva, vocábulo expressiva)を分ける考え方があり、それぞれ以下のように定義づけられている。

擬音語(onomatopeia)1)
 ある操音を当該言語の音響的な効果によって近似的に表現した語
             
表出語 (palavra expressivo) 2)
 意味はないが、話し手のある種の感情を表現したり暗示したり出来る音声の連鎖から形成された語を言う。この種の語の構造は表面的にのみ擬音語的であるか、あるいは音声的に摸しているようにもみえるが、表出語の起源をじっさいの音によって説明することは出来ない。

 擬態語の極めて豊かな日本語に比べて、ポルトガル語における表出語の割合は極めて少ない。そのため形態の範疇化が困難で、どのような語を表出語とするかの基準がはっきりしない。擬音語については明確な定義がある。しかし、表出語と同様に数は少なく、標準的文語では滅多に用いられずインフォーマルな口語での使用に限られている。伝統的にはさまざまな分類が試みられており、たとえば Nogueira は以下のような分類をおこなっている。3)

1 直接模倣の擬音語 onomatopaica
例)au-au ワン(犬の鳴き声)cocorocó コケコッコー(鶏の鳴き声), chapeピシャ(水に物が落ちるときの音)

2 擬音語から派生した擬音的語 palavra onomatopáica
  例)miar (猫がニャーニャー鳴く)

3 外部の物理的音響を実在するいくつかの語と結び付け作られた擬音語「聞きなし」という形態のもの onomatopeia fonético-ideológico
  例)pouca terra pouca terra シュッシュポッポ(汽車の走る音), estou-fraca estou-fraca (ホロホロチョウの鳴き声)

4 擬音語起源の名詞
  例)reco-reco(楽器の名前), tico-tico(スズメ)

5 擬音語とされるが、擬態的にも用いられる語
  例)pumba 擬音語(ドカーン)、擬態語 素早い動作を表す(サッ).
 


1. Câmara, Jr. Joaquim Mattoso(1970). Dicionário de Filologia e Gramática. 4ed,Rio de Janeiro(J.Ozon Editor) p 289
2. Maria Francisco Xavier, Maria Helena Mateus(1990). Dicionário de Termos Linguísticos, Lisboa (Edições cosmos)p100
3. NOGUEIRA, Rodrigo de Sá (1950). Estudos sobre as onomatopéias. Lisboa, Livraria Clássica


Copyright © 2012Tomoe Tsukada All rights reserved