黙字の mudo
 正書法上で音価をもたない文字を言う。たとえばポルトガル語において < h > の文字はつねに黙字である。
  há /'a/
 正書法の改正において
黙字の扱いはつねに問題とされてきた。もっとも最近の正書法改正(1990)によって、いわゆる「黙字のc と p (c e p mudos)」が廃止されるにあたり、PEの使用者の側に大きな抵抗感があったのは周知の事実である。これは「無音」というものの、これらの < c, p > の文字が直前の母音が 強勢音節(sílaba tónica | tônica)あるいは強勢前音節(sílaba pretónica | pretônica) において の伝統的に言う開口音(aberto) であることを示す音韻的な機能を果たしていたからである。いっぽうのPBでは強勢前音節において開口音か閉口音かの対立が中和しているためこのことは問題にならない。
 
黙字のc, p を廃止したことによって、PEの使用者、とりわけ外国語としてPEを使用する者にとっては正書法上に示されていた音声記号がなかば失われたことになり、より記憶の負担が増加した事を意味する。またこれらのほんらいは語源的な「黙字の」文字を削除していくと、理論的にはすべての < h > も廃止の対象となるが、これは今後の問題である。PBにおいては <húmido> の語頭の<h> が削除され < úmido> となっているが、< úmido> の派生語以外はすべて <h> は維持されている。 
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