正書法規則集 Formulário Ortográfico
 ポルトガルで1911年に定められた正書法規則。formulário は fórmula(規則、規定)の集合名詞。ゴンサルヴェス・ヴィアーナらの正書法改革委員会が作成。20世紀初頭のポルトガルの共和制樹立にともなう進取の精神に基づく改革として注目に値する文化政策のひとつとされる。
 19世紀末より近代国家にふさわしいかたちで教育、行政上統一された正書法をもちいるためポルトガルで統一基準が作成されはじめた。これらの集大成がこの正書法規則集である。それまでのy/i/, ch/k/, ll/l/, mm/m/, ph/f/, rh/r/, th/t/ など語源的正書法が廃され今日の見慣れたポルトガル語の正書法がポルトガル語圏にあまねくもちいられるきっかけとなった。いっぽう両国それぞれの言語事情に配慮した規定があったため、異なる表記が固定して行く。たとえば同協定では「黙字のpとc」は音韻的基準により使用が自由とされている(Base IX)。かくして統一の目的でこれらの黙字が廃止されるのに100年を超える歳月が必要となった。
 現代の正書法は1931年、1945年、1990年の正書法協定を経て、ほぼこの規則集に準じている。この正書法規則集はポルトガルで制度化する前にブラジルとの協議を欠いていたためブラジル文学アカデミーの反発を招き、以後一世紀以上におよぶポルトガル語圏における正書法にかかわる諸問題の発端となった。原文は以下において参照できる。
http://www.portaldalinguaportuguesa.org/acordo.php?action=acordo&version=1911


Copyright ©2013 Shiro Iyanaga All rights reserved.