大過去形 Pretérito mais-que-perfeito
 大過去形は直説法と接続法にある一群の活用形式である.

【直説法・大過去形】 Pretérito mais-que-perfeito do indicativo
 形式的には複合形と単純形があるが、単純形は格式張った文語に限られる. 過去のある時点を基準にして、それより前に実現した状況あるいは過去の経験をあらわす.

 
〔複合形:ter/haver 直説法・半過去形+過去分詞〕
(1) Quando cheguei a casa, o pacote já tinha chegado. いえにもどったら小包はもう届いていた.
(2) Nunca tinha ouvido uma melodia tão linda.こんなにきれいなメロディーは聴いたことがなかった.(もう聞いた)

 規範的には単純形 (falara) に加えて助動詞を ter あるいは haver とする複合形 (tinha falado, havia falado)の3通りの形式が可能である。しかしながら〔ter 直説法・半過去形+過去分詞〕がもっとも普通に用いられる。

〔単純形:直説法・過去・2人称単数形の語幹+活用語尾 〕
活用語尾:
-ra, -ras, -ra, -ramos, -reis, -ram

【接続法・大過去形】 Pretérito mais-que-perfeito do conjuntivo | subjuntivo
〔複合形のみ:ter/haver 接続法・半過去形+過去分詞〕
 接続法・大過去形は位置づけ機能の点では直説法に並行しており、動詞が従属節内で接続法を要求する場合に現れる。すなわち主動詞が接続法をとる場合、従属節内で過去のある時点から見てそれ以前に実現した状況をあらわす.
(3) O João negou categoricamente que tivesse falsificado o documento. ジョアンは書類の偽造はぜったいしていないと堅く否定した.

 接続法・大過去形は複合形のみで単純形は存在しない. 接続法・大過去形は規範的には助動詞としてhaver をみとめ tivesse falado, houvesse falado 両方の形式が可能であるが、実際は前者が圧倒的に優勢である。なお同形式を「接続法過去完了」と呼ぶこともあるが、「完了過去(pretérito perfeito)」と紛らわしいうえ、直説法・接続法ともに原語では «Pretérito mais-que-perfeito» であるから、用語の並行性を考慮すると、「大過去形」の名称が望ましい.


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