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時称の形式的区別にもちいる概念. 助動詞(ter, haver) および主動詞の過去分詞を連結する形式を複合時称 (tempo composto)とよび、形容詞 composto が「複合形の」の意味である.いっぱんに複合時称とされるものは以下の7種の時称範疇である(不定詞は「過去不定詞」と呼ぶ. ex. teres falado).
直説法・複合過去形(tenho falado)、直説法・複合大過去形(tinha falado)、直説法・複合未来形(terá falado)、直説法・複合過去未来形(teria falado), 接続法・過去形(tenha falado)、接続法・大過去形(tivesse falado),接続法・複合未来形(tiver falado).
複合形における助動詞は現代ポルトガル語では圧倒的に ter が用いられ haver はきわめてまれにしか用いられない. また過去分詞の種類により能動態と受動態を区別する用法は規範的には以下の3とおりの原則による. しかし規範文法の規則にかかわらず不規則形・規則形の2種の過去分詞を持つ動詞の態による区別は、実情が複雑で流動的である.
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動詞の種類
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過去分詞
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例
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1.
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規則形過去分詞のみを持つ動詞 |
能動態・受動態ともに規則形過去分詞を用いる |
ex.
têm falado, são falados, etc. |
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2.
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不規則形過去分詞のみを持つ動詞 |
能動態・受動態ともに不規則形過去分詞を用いる |
ex.
tens feito, serão feitas, etc. |
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3.
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規則形・不規則形過去分詞を持つ動詞 |
能動態には規則形過去分詞、受動態には不規則形過去分詞を用いる |
ex.
terão expressado, é expressa, etc. |
主動詞のみの形式による単純形 (simples) と区別する. たとえば直説法・大過去形は単純形と複合形をもち、文体的に単純形がより文語的であるが、基本的には意味的に同値であるとされる.
tinhas falado –– falaras
また形式的に複合形と単純形の名称上の対が意味的に同値ではないこともある. たとえば直説法・過去・単純形(直説法・過去形)と直説法・過去・複合形(直説法・複合過去形)とは意味が大きく異なる.
falei –– tenho falado
また直説法・未来形(falarás) と直説法・複合未来形(terás falado) はNGBにあるように形式的差異(単純形か複合形か)として体系化されるいっぽう、NGP に従ってアスペクト的差異(完了か未完了か)として論ずることもある。邦語ではNGBに従った用語が一般的である.
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ex. falarás
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ex. terás falado
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形式的対立(NGB)
Futuro do presente simples do Indicativo |
Futuro do presente composto do Indicativo |
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アスペクト的対立(NGP)
Futuro imperfeito do Indicativo |
Futuro perfeito do Indicativo. |
また全ての時称が単純形と複合形をもつわけではない.たとえば接続法・過去形 (Pretérito perfeito do Conjuntivo | subjuntivo) および同・大過去形 (Pretérito mais-que-perfeito do Conjuntivo) は対になる単純形が存在しない. したがって名称には «composto» はブラジル文法用語集(NGB)では用いられていない.
tenhas falado 接続法・過去形
tivesses falado 接続法・大過去形
いっぽうのポルトガル文法用語集(NGP)では«composto» を名称に含むのでそれぞれがPretérito perfeito composto do Conjuntivo(接続法・複合完了過去形 ), Pretérito mais-que-perfeito composto do Conjuntivo(接続法・複合大過去形 ) と呼ばれる. 邦語ではNGBに従った用語が一般的である.
なお複合形 (composto) の訳語として*「完了形」を用いることがある。これは英文法における«have+過去分詞» の用語を流用したものと思われるが、ポルトガル語学においてはこのような用法は見当たらず馴染まない. 他の完了時称(tempos perfeitos)との関係上誤解・混乱を招くので避けるべきである. 形式と意味、呼称についてはそれぞれの項目を参照されたい. |
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