言語変種  valiedade linguística
 ある特定の共同体に特徴的な言語体系のことを言語変種(variedade)という。ポルトガル語圏全体に関してはヨーロッパのポルトガル語(Português europeu, PEと略す) とブラジルのポルトガル語(Português do Brasil, PBと略す)をふたつの特徴的言語体系、すなわち変種として扱う。それぞれをvariedade europeia do português および variedade brasileira do português ともいう(Mateus et alii, 2003:34).
 話者の属する地域によって異なる変種を地域変種(variedade regional)といい、例えばブラジル国内であれば、リオデジャネイロの変種(variedade carioca)、サンパウロ市東部の変種(variedade da Zona Leste da cidade de São Paulo)といったように、各々の地域に固有の言語体系のことを指す。
 一方で、話者の社会的属性によって異なる変種を社会変種(variedade social)と呼ぶ。これは、若者言葉や女性語といったように、年齢、性別、階層、職業などに基づく変種のことである。
 また、ある国で標準語として使用される変種を標準変種(variedade standardもしくはvariedade padrão)と呼ぶ。ブラジルの場合、標準変種というと、通常、大都市に居住する高等教育修了者(教養層)が使用する変種を指す。この教養層が用いる変種のことをポルトガル語で variedade cultaと呼ぶこともある(標準規範の項参照)。
 日常的な文脈においてしばしば「方言」は優劣の差を連想させ得るが、「変種」は中立な学術用語として用いられる。言語学的観点からは変種間に優劣の差はなく、いずれの変種も等しく多様で複雑な体系を持つと考えられる。

Copyright © 2017 Rena Torii All rights reserved