命令文 frase imperativa
 文の内容に基づく分類のひとつで、対称(話し相手)に何らかの行動を求める内容をもつ。肯定命令文と否定命令文がある。対称が2人称単数の場合、肯定命令には命令法、否定命令には接続法を用いる。
(1) Vem cá. こちらへ来い.
(2) Não venhas cá. こっちへ来ないで.

 対称が3人称の名詞の場合(você, a senhora,vocês, etc.)肯定、否定を問わず接続法を用いる。
(3) Venha cá. こちらへ来てください.
(4) Não venha cá . こっちへ来ないでください.

 対称が1人称複数の場合は常に接続法を用いる。
(5) Vamos de táxi. タクシーで行こう.

 以上の規範文法とは異なり、PBの常用規範による命令文では、伝統的な学校文法に従うと「対称詞の文法的人称が3人称単数にも関わらず命令文では命令法の2人称単数形を用いる」と解釈される状況が観察される。
(6) Você fala devagar. 君はゆっくり話す.
(7) Fala devagar. ゆっくり話してくれ.

 
しかしながら平叙文が主語を伴うのに対して命令文は主語を欠くという対立でより合理的に説明される。特に再帰代名詞を伴う動詞の場合主語の有無という対立が明確になる。
(8) Você se apressa. 君は急いで行く.
(9) Se apressa. 急いで行け.

 上記(9) の文の動詞形式を命令法・2人称単数形とすると再起代名詞が te ではなく se となっていることの説明が困難である。したがって(8) と(9) の対から平叙文と命令文との対立は主語の有無であると言う事ができる。常用規範では、否定命令文においても事情は同じで、(10)と(11) が対となる。
(10) Você não se apressa. 君は急いで行かない.
(11) Não se apressa. 急いで行くな.

 ブラジルの学校文法においては常用規範の命令法は口語文法の規範として取入れられていない。いっぽう、命令法じたいを見直し、命令法の活用表に接続法の形式をとりいれたより合理的な例も見られる。


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