能格性  ergatividade
 バスク語やオーストラリア先住民諸言語では、自動詞文の主語と他動詞文の目的語を同じ格(絶対格)で表し、他動詞文の主語を別の格(能格)で表す。このように自動詞文の主語と他動詞文の目的語が同等の扱いを受けること、および、両者の対応関係を能格性と呼ぶ。一方、日本語や英語、ポルトガル語では、自動詞文の主語と他動詞文の主語を同じ格(主格)で表し、他動詞文の目的語を別の格(対格)で表す。このように自動詞文の主語と他動詞文の主語が同等の扱いを受けること、および、両者の対応関係を対格性と呼ぶ。能格性を示す自動詞を能格動詞と呼ぶが、対格性を示さないという点で非対格動詞とも呼ぶ。また、能格性を示さない自動詞を非能格動詞と呼ぶ。

 英語や日本語と同様に、ポルトガル語にも能格はないが、能格性(非対格性)を示す現象がある。例えば、以下の例が示すように、非対格動詞 chegar の主語と他動詞 consertar の目的語を用いて、過去分詞の分詞構文を作ることができる。

1.
Chegados os meninos, todos saíram. 子どもたちが着いたので、みんなは出かけた。

2.
Consertada a porta, a sala ficou silenciosa. ドアが修理されると、部屋は静かになった。

一方、以下の例が示すように、他動詞 consertar と非能格動詞 correr の主語を用いて、過去分詞の分詞構文を作ることはできない。

3.
*Consertada a Maria a porta, …

4.
*Corrido o menino, …

 このように、過去分詞の分詞構文においては、非対格動詞の主語と他動詞の目的語との間に共通する特徴が現れ、能格性(非対格性)を示す例と言える。

参考: Mateus et al. (eds.) (2003)Gramática da língua portuguesa. Lisboa: Caminho. 高見健一・久野暲(2002)『日英語の自動詞構文』研究社。

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