二重過去分詞 particípio dúplo
 伝統的には規則形、不規則形の二通りの過去分詞を持つ動詞は «verbo abundante» あるいは«verbo de dúpulo particípio» と呼ばれる。ここでは後者を用いる。
 規範的には能動態では規則形、受動態では不規則形を用いると言われるが、使用の実態は複雑で規範とはかなり乖離している。たとえば動詞 «submergir» についてみれば (1) の能動態では規則形の過去分詞 «submergido» を用い、主語の性・数と無関係に男性・単数形をもちいるが、(2) の受動態では不規則形の過去分詞 «submerso» を用い主語の性・数に一致するというのが規範的規則である。
(1) A água terá submergido todo o terreno.
(2) Duas aldeias serão submersas pela nova barragem.

 しかしながら PE の現代ポルトガル語コーパス(CetemPúblico) 上で検索すると、原則に関わらず動詞 «submergir» については、受動態では «ser submergido», «ser submerso» 両方の形が用いられるが、«ter submerso»は用例が見当たらず«ter submergido»のみ実例が見られることがわかる。また動詞 «aceitar» に関しては、能動態と受動態で過去分詞の規則形と不規則形は以下の表1,2のように分布している。すなわちわれわれが経験的に知っているとおり規則形がほぼ廃れ、能動態でも受動態でも不規則形を用いる方向に収斂しつつあることがわかる。

能動態
受動態
 こうした実証的な検証を踏まえた分布に基づくと、PE, PBで若干の差が認められ、実態はきわめて流動的ではあるが、基礎的動詞14動詞に関して調査した結果によるとほぼ同様の傾向が見られることがわかる。PBにおいてPEと異なるところを網かけしてある。詳しくは彌永(2017)参照 (*)

(*) 彌永史郎, 2017. ポルトガル語の過去分詞 ─ 規則形と不規則形. 京都外国語大学研究論叢88号

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