ヨッド iode
 ヘブライ語のアルファベットで10番目の文字のこと。音声学では、半母音の/j/のことを指す。
 国際音声記号(IPA)の多くがアルファベットと重複しているが、アルファベットと音声記号とを区別するために後者にはアルファベットの読みとは異なる独特の呼び名が慣習的に与えられることがある。
 硬口蓋接近音に用いられるIPAの音声記号[j]は英語のアルファベットの文字<j>としての名称は,/ˈdʒeɪ/ポルトガル語ならば«jota/ˈʒɔtɐ/»であるが、音声記号としては 慣習的に«yod/ˈjod/ » という名称で呼ばれる(同様にアルファベットに存在しない音声記号、たとえばʒは«ezh /ɛʒ/» と呼ばれる。
 また、言語史上では音声記号としての y <yod>, <iode> は硬口蓋付近に調音点をもち、音声的には[ i ]の音質を持つ、渡り音的性質をもった音を指すことがある。特にポルトガル語史では、ラテン語からガリシアポルトガル語に至る間におこった子音の口蓋化の過程において、これらの子音に後続する母音i, eがyod [ j ]として発音されていた例が音声記号としては [y] を用いて例示されることがある。
  例 pretium>port. preço, ([ty]>[tsy]>[ts]>[s]) (yはyodを表す)
 これらの表記はIPAが一般化する以前の古いタイプの音声表記の体系によっている。IPAを用いれば同じことを[tj]>[tsj]>[ts]>[s]と表記する。
 いっぽう IPAによれば音声記号の [y] は第二基本母音の円唇・前舌・狭母音であり音声的実態は[ j ] とは異なる。 円唇・前舌・狭母音の [y] の慣習的呼称はとくに定まっていないので、英語読みなら «y /wái/», ポルトガル語読みをすれば «ípsilon/ˈipsilõ/» と読めば良い。

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