過去形 pretérito perfeito
 過去形は直説法(例:falou, comeu, partiu) のほか接続法(例:tenha falado, tenha comido, tenha partido)に認められる。原語の perfeito は「完全な」の意味ではなくアスペクト的に「未完了相の(imperfeiro)」と対になる「完了相の」の意味であり、 Pretérito perfeito を完了過去(形)と訳してもよい。本小辞典ではたんに過去形と呼ぶ。
 直説法・過去形は基本3時称(直説法・現在形、直説法・過去形、非人称不定詞)のひとつ。直説法・過去・2人称単数形、あるいは3人称複数形から得られる語幹に活用語尾を加えることにより、直説法・大過去形(例:falara)、接続法・半過去形(例:falasse)、接続法・未来形(例:tiver falado)を派生させる。さらに助動詞を介して接続法大過去形(例:tivesse falado)および接続法・複合未来形(例:tiver falado)を派生させるという、動詞活用体系の大きな要をなす重要な活用形である。

 直説法においては単純形(Pretérito perfeito simples)と複合形 (Pretérito perfeito composto) の2形式があるが、通常、とくに必要のない限り「単純形」を付さない。従って、たんに直説法・過去形という場合単純形を指し複合形は直説法・複合過去形(例:tem falado)と呼ぶ。

■直説法過去形(Pretérito perfeito do indicativo)
Ontem encontrei-me com a Paula. 昨日私はパウラと出会った.

■接続法過去形(Pretérito perfeito composto do conjuntivo | subjuntivo)
Espero que a Paula tenha chegado a casa sã e salva ontem à noite. パウラが昨夜無事家に戻っていればよいが.

 直説法・過去形は現在の視点から問題の状況を過去の時点に位置づける。同様に「過去」を時称の名称として持っている時称形式についてはそれぞれの項目を参照されたい。

 →直説法・ 半過去形, 直説法・ 大過去形, 直説法・ 過去未来形.

 接続法・過去形は複合形のみ存在し単純形が存在しないので、原語では(Pretérito perfeito composto do conjuntivo | subjuntivo)であるが日本語の用語では簡単のために「複合形」を省く。接続法・過去形に対して日本語の用語として接続法現在完了という呼称も用いられるが、原語では「完了相の(perfeito)」「過去形(pretérito)」すなわち直訳すれば「完了相・過去」である。日本語名称としては「現在完了」をとると「現在」の出所が不明で根拠がない。原語の名称ならびに時称的機能の直説法との並行性を踏まえると、この形式はたんに「過去形」とするのが望ましい。
 →接続法・ 半過去形接続法・ 大過去形.


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